中国越境EC物流・実務

中国向け越境EC物流ガイド|コストと2大モデルを徹底比較

更新 約14分で読めます監修:株式会社エフカフェ 越境EC事業部

この記事の要点

販売量が大きく売れ筋が決まっているなら保税区モデル、テスト販売や多品種なら直送モデルが向いています。

  • 保税区モデル:売れ筋があり早く届けたい場合に向きます。在庫リスクと保税倉庫の保管料などがかかります。
  • 直送モデル:テスト販売や多品種に向きますが、届くまで日数がかかり、1注文あたりの物流費は高くなりがちです。
  • コスト:物流コストは国際送料、越境EC総合税、倉庫費用、通関手数料、中国国内配送料の5つで構成されます。

中国市場への進出を目指す多くの事業者様にとって、「越境ECの物流」は成功を左右する重要な要素です。しかし、「どの配送方法を選べば良いかわからない」「複雑なコスト構造が把握できない」「現地の法律や規制が不安」といった課題を抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、中国向け越境EC事業を検討している企業担当者様や経営者様に向けて、物流の全体像から具体的な手法、コスト、注意点までを網羅的に解説します。

特に重要な「保税区モデル」と「直送モデル」の違いを明確にし、貴社の事業規模や商材に最適な物流戦略を見つけるためのヒントを提供します。まずは結論として、2つの主要な物流モデルを比較した表からご覧ください。

【比較表】保税区モデルと直送モデルのメリット・デメリット

配送スピードと1点あたりの送料は保税区モデル、初期コストの低さは直送モデルが有利です。

中国向け越境ECの物流モデルは、大きく分けて「保税区モデル」と「直送モデル」の2つです。どちらを選ぶかによって、コスト、配送スピード、対応できる商品が大きく異なります。自社の状況に合わせて最適な方法を選ぶための比較表です。

比較項目保税区モデル(網購保税進口・1210/1239)直送モデル(直購進口・9610)
配送スピード速い(中国国内の保税倉庫から出荷)遅い(注文を受けてから日本から送る)
送料1点あたりは安い(国際輸送はまとめて行い、注文ごとには中国国内の配送料)高くなりがち(注文単位で梱包した荷物の国際配送費がかかる)
初期コスト高い(まとめての輸送費、倉庫の契約・保管料)安い
在庫管理必要(中国の保税倉庫で管理、売れ残りのリスクあり)必要(日本国内で管理)
対応商材ポジティブリスト掲載品のみ越境ECのルートで通関するならポジティブリスト掲載品のみ(リスト外の商品は、条件によっては個人物品として送れる場合があるが、一般貿易の扱いになることもある)
顧客体験良くしやすい(早く届けやすい)不利になりやすい(届くまでに日数がかかる)
向いている事業者販売量が大きい/売れ筋商品が決まっている/SKU数が少ないテスト販売/小規模スタート/SKU数が多い/高価格帯商品

この表からもわかるように、安定した売上が見込める商品は「保税区モデル」、スモールスタートや多品種を扱う場合は「直送モデル」が適していると言えます。

中国向け越境EC物流の基本的な流れと仕組み

日本での梱包と輸出通関から中国の輸入通関、国内配送まで6段階あり、輸入通関で2つのモデルに分かれます。

次に、商品が日本の倉庫から中国の消費者に届くまでの全体像を把握しましょう。ECサイトで注文された商品は、「EC貨物」として国境を越えて輸送されます。基本的なフローは以下の通りです。

中国向け越境EC物流の基本的な流れと仕組み。輸入通関(中国)で「保税区モデル」か「直送モデル」かによってプロセスが分かれます。直送モデル(直購進口・9610):消費者から注文が入るたびに、日本の倉庫で受注商品をピッキングし、注文単位で梱包した荷物を国際郵便や国際宅配便で送り、中国に着いた時点で通関し、消費者へ届けられます。保税区モデル(網購保税進口・1210/1239):まとめて輸送します。まとめて保税区に搬入し(このときは貨物としての入区申告)、保税のまま倉庫で保管します。注文が入るごとに越境ECの申告と納税を済ませて区外へ出し、国内の配送業者が消費者へ届けます。
  1. 1.商品集荷・梱包(日本国内)
    • ・日本の倉庫で受注商品をピッキングし、国際輸送に適した梱包を行います。
  2. 2.輸出通関(日本)
    • ・価格が20万円以下の郵便物は税関への輸出申告が不要で、「税関告知書」を作って郵便物に付けて差し出します。価格が20万円を超える郵便物は、仕入書(インボイス)などを用意して輸出申告が必要です(税関「外国へ郵便物を送る場合の手続」1)。国際宅配便や貨物で送る場合の手続きは、利用する物流事業者に確認してください。
  3. 3.国際輸送(日本→中国)
    • ・航空便や船便で中国へ商品を輸送します。直送では注文を受けてから注文単位で梱包した荷物を国際郵便や国際宅配便で送り(複数の荷物をまとめて国際輸送する運用もあります)、保税区モデルではまとめて輸送します。
  4. 4.輸入通関(中国)
    • ・中国の税関で輸入申告と納税手続きを行います。ここで「保税区モデル」か「直送モデル」かによってプロセスが分かれます。
  5. 5.倉庫保管・国内配送(中国)
    • ・保税区モデルの場合: 商品はまとめて保税区に搬入し(このときは貨物としての入区申告)、保税のまま倉庫で保管します。注文が入るごとに越境ECの申告と納税を済ませて区外へ出し、国内の配送業者が消費者へ届けます。
    • ・直送モデルの場合: 注文ごとに梱包した荷物が中国に着いた時点で通関し、消費者へ届けられます。
  6. 6.消費者へ配達完了

輸送の手配、通関、税関へのデータ送信、倉庫業務を自社だけで担うのは負担が大きいため、越境ECに対応した物流事業者(フォワーダーや通関業者、倉庫事業者など)に委託するのが一般的です。

中国向け越境EC物流の2大モデル詳細

保税区モデルは早く届けやすい代わりに在庫リスクがあり、直送モデルは初期投資を抑えられる代わりに送料が高くなりがちです。

比較表で概要を掴んだところで、それぞれのモデルの仕組みと特徴をさらに詳しく見ていきましょう。

保税区モデル(BBCモデル)の仕組みと特徴

保税区モデル(Bonded Warehouse Import / BBCモデル)とは、先に商品をまとめて中国国内の「保税区」にある倉庫に輸送・保管し、注文が入ってから通関手続きを行い、国内配送する方式です。

ここでいう「保税区」は、税関の管理下で輸入の税金を納めないまま商品を置いておける施設の総称です。税関総署公告2018年第194号2では、網購保税進口は「海関特殊監管区域」または「保税物流中心(B型)」で行うと定められています。なお、1239(網購保税進口A)は1210とは別の監管方式です。

メリット

  • ・配送スピードの向上: 商品は既に中国国内にあるため、注文後の国際輸送がないぶん、直送より早く届けやすくなります。実際の日数は倉庫や配送地域によって違います。
  • ・送料の削減: まとめて輸送するため、1点あたりの国際輸送費を抑えやすくなります。
  • ・返品対応: 越境EC小売輸入の商品は、越境EC企業の国内代理人(またはその委託を受けた通関業者)が申請し、中国国内の元の税関監督作業場所などへ戻す形で返品できる仕組みがあります(税関総署公告2018年第194号)。返品の期限や戻し先などの条件はその後の公告で見直されることがあるため、最新の運用は物流事業者に確認してください。この仕組みは直送・保税区のどちらにも関わります。

デメリット

  • ・在庫リスクとコスト: 事前に商品を仕入れて輸送するため、売れ残った場合の在庫リスクが伴います。また、保税倉庫の保管料や管理費といった固定費が発生します。
  • ・対象商品の制限: 原則として、後述する「越境ECポジティブリスト」に掲載されている商品しか取り扱うことができません。

直送モデル(BCモデル)の仕組みと特徴

直送モデル(Direct Shipping / BCモデル)とは、消費者から注文が入るたびに、日本の倉庫から国際郵便(EMS等)や国際宅配便を利用して、商品を直接中国の消費者へ発送・配送する方式です。越境EC小売輸入としての直送(直購進口・9610)は、配送サービスを使うだけで成り立つものではなく、三単の送信や「申報清単」による申告など、税関の手続きを満たす必要があります。EMSなどで個人あての荷物として送る「個人物品」のルートは、これとは別の制度です。

メリット

  • ・スモールスタートが可能: 中国の保税倉庫に先に在庫を置く必要がないため、初期投資を抑えて始められます(日本側の発送拠点での在庫管理は必要です)。
  • ・補足(リスト外の商品): 直送(9610)でも、ポジティブリストに載っていない商品は越境EC小売輸入のルートでは送れません。別制度の「個人物品」のルートなら送れる場合がありますが、関税・増値税・消費税をまとめた総合税率による簡易課税(通称「行郵税」)の対象になり(税額50元以下は免税)、個人が自分で使う範囲を超えると税関が判断すれば一般貿易として扱われます。天猫国際などで越境EC小売輸入の税制・規制上の扱いを使って売る場合は、9610・1210・1239のいずれかのルートに従う必要があります。
  • ・多品種少量に対応しやすい: 注文単位で発送できるため、商品ごとの販売数が少ない段階でも扱いやすく、多品種少量販売に向いています。

デメリット

  • ・リードタイムの長さ: 注文を受けてから日本から送るため、保税区モデルより顧客の手元に届くまで日数がかかり、顧客満足度が低下する可能性があります。
  • ・送料の高さ: 注文単位で梱包・発送するため、保税区モデルと比べて1注文あたりの国際物流費が高くなりがちです。「中国の通販サイトは送料無料」という認識が広まっているため、送料が購入の障壁になることもあります。
  • ・返品の手間: 中国国内に在庫拠点がないため、返品された商品の受け取り・保管・再販売の段取りを、物流事業者と事前に決めておく必要があります。

中国越境EC物流のコスト構造と費用内訳

物流コストは国際送料、越境EC総合税、倉庫費用、通関手数料、中国国内配送料の5つで構成されます。

越境ECの物流コストは複数の要素で構成されます。採算性を判断するためにも、どのような費用が発生するのかを正確に把握しておくことが重要です。

  • 国際送料
    • ・日本から中国への輸送にかかる費用です。EMS(国際スピード郵便)などの国際郵便や、クーリエ便(DHL、FedEx等)といった配送方法によって料金が大きく異なります。直送モデルでは主要なコストとなります。
  • 越境EC総合税(関税・輸入段階の増値税・消費税)
    • ・越境EC小売輸入のルートで販売する場合は「越境EC総合税」がかかります。1回の取引が5,000元以下、1人あたりの年間の購入額が26,000元以下であれば、関税は0%、増値税と消費税は本来の税額の70%です。課税価格が5,000元を超え26,000元未満で、注文の中身が1点だけ、かつ年間の累計が上限を超えない場合は越境ECのルートで輸入できますが、関税・増値税・消費税(対象商品のみ)が全額かかります(出典:財関税〔2018〕49号3)。
    • ・(参考:日本貿易振興機構(JETRO)「中国における越境ECの概要4」)
  • 倉庫費用
    • ・保税区モデルでは中国の保税倉庫の費用が、直送モデルでも日本側の発送拠点で在庫を保管する場合はその倉庫の費用がかかります。内訳は、倉庫保管料、入庫・出庫作業料、検品・梱包作業料などがあります。
  • 通関手数料
    • ・輸出入の際に税関手続きを代行するフォワーダーや通関業者に支払う手数料です。
  • 中国国内配送料
    • ・保税倉庫や直送の拠点から、中国国内の最終消費者まで商品を届けるための配送料金です。

これらのコストをトータルで算出し、商品価格に適切に反映させる事業計画が不可欠です。

越境ECの必須知識|ポジティブリストと通関手続き

ポジティブリストに載らない商品は越境ECのルートでは輸入できず、通関では注文と決済と物流の三単を税関が照合します。

中国の越境ECを運営する上で、避けては通れないのが法律や規制です。特に「ポジティブリスト」の理解は必須となります。

越境ECポジティブリストとは

「越境EC小売輸入商品リスト(通称:ポジティブリスト)」とは、中国政府が定めた、越境EC制度の優遇税制(越境EC総合税)を適用できる商品のリストです。
2018年の6省庁通知(商財発〔2018〕486号5)は、越境EC小売輸入の対象をこのリストに載っている商品に限っています。現行のリストは2019年12月24日に発表され、2020年1月1日から実施されており、2022年に一部が変更されました。リストに載っていない商品は越境ECのルートでは輸入できず、一般貿易で輸入する場合は、品目ごとの規制に応じて、原産地証明書や成分表の提出、中国語ラベルの作成、許認可などが必要になることがあります。

  • ・注意点: 同じカテゴリーの商品でも、成分や仕様によっては対象外となる場合があります。必ず最新のリストをHSコード(商品を分類するための国際的な番号)と照らし合わせて確認する必要があります。調べ方は越境ECのポジティブリスト(正面清単)とはで解説しています。

通関手続き

越境EC小売輸入では、注文(交易)・決済(支付)・物流の3つの電子情報、いわゆる「三単」を税関が突き合わせます。税関総署公告2018年第194号により、輸入申告の前に、プラットフォーム(または越境EC企業の国内代理人)、決済事業者、物流事業者がそれぞれ、国際貿易の「単一窗口」などを通じて税関にデータを送ります。直送(直購進口)では、郵便事業者や国際宅配便の事業者が、プラットフォームなどから委託を受けて、注文・決済の情報もあわせて送ることができます。公式の文書では「三単」の「比対(照合)」と書かれており、業界では「三単対碰」「三単合一」とも呼ばれます。

また、同じ公告により、プラットフォームと国内代理人は、注文者の身元情報が本当かを確かめる責任を負います。身元情報が当局の認証を受けていない場合は、注文者と支払者が同じ人である必要があります。こうした手続きには税関とのシステム連携が必要になるため、越境ECに対応した物流パートナーに委託するのが一般的です。

失敗しない物流倉庫・フォワーダー選定の5つのポイント

実績、2モデルへの対応、API連携、明確な料金体系、日本語でのサポート体制の5点で物流パートナーを見極めます。

中国向け越境ECの成功は、信頼できる物流パートナーを見つけられるかにかかっています。倉庫やフォワーダーを選ぶ際には、以下の5つのポイントを確認しましょう。

  1. 1.中国向け越境ECの実績と専門性
    • ・中国の複雑な法規制や商習慣に対応した実績が豊富かを確認します。特に化粧品や食品など、規制が厳しい商材の取り扱い経験は重要な判断材料になります。
  2. 2.物流モデルへの対応範囲
    • ・保税区モデルと直送モデルの両方に対応できるかは重要なポイントです。事業フェーズに合わせて柔軟に物流戦略を変更できるパートナーが理想的です。
  3. 3.システム連携(API連携)
    • ・自社が利用しているECカートシステムや在庫管理システム(WMS)とAPIで自動連携できるかを確認しましょう。受注から発送までのプロセスを自動化することで、人的ミスを防ぎ、業務効率を大幅に改善できます。
  4. 4.明確な料金体系
    • ・国際送料、倉庫保管料、各種手数料など、料金体系が明確で分かりやすいかを確認します。隠れたコストがないか、複数の会社から見積もりを取って比較検討することが大切です。
  5. 5.充実したサポート体制
    • ・日本語でスムーズにコミュニケーションが取れるか、トラブルが発生した際に迅速に対応してくれるかといったサポート体制も重要です。現地の事情に精通したスタッフがいると心強いでしょう。

まとめ

本記事では、中国向け越境ECの物流について、2大モデルである「保税区モデル」と「直送モデル」の比較を中心に、物流の全体像からコスト構造、法規制、パートナー選びのポイントまでを解説しました。

複雑に見える中国の越境EC物流ですが、その核心は「自社の事業規模、商材、戦略に合わせて最適な物流モデルを選択すること」にあります。

  • ・売れ筋商品があり、迅速な配送で顧客満足度を高めたいなら「保税区モデル」
  • ・まずは低リスクでテスト販売から始めたい、多品種を扱いたいなら「直送モデル」

この記事で得た知識をもとに、貴社の中国市場での成功に向けた第一歩として、信頼できる物流パートナー探しから始めてみてはいかがでしょうか。

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