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中国越境EC規制・審査

中国で使える健康食品の原料はどう調べるのか — 「越境ECなら登録不要」の先にある4つの名簿と、自社処方を確認する手順

更新 約14分で読めます

この記事の要点

中国向けの越境EC(保税区モデル・直送モデル)では、健康食品に中国国内の登録手続き――保健食品の注册・備案、いわゆる「藍帽子」の取得――が求められません(根拠:商務部ほか「商財発〔2018〕486号」)。

ただし免除されているのは登録の義務であって、その原料を中国で食品として使ってよいかという判定そのものではありません。判定は制度名を追いかける作業ではなく、原料名で名簿を引く作業です。中国側で参照される名簿は大きく4つあり、それぞれ根拠となる公告が違います。

「越境ECなら登録不要です」という説明は、商社や代行会社からも、検索結果の上位からも返ってきます。事実としては正しいのですが、多くの説明はそこで止まります。自社の処方に漢方系の素材や機能性素材が入っているとき、担当者が本当に知りたいのは「登録が要るかどうか」ではなく、「この成分表のまま出せるのか、出せないならどれが引っかかるのか」です。

この記事では、中国側の公告の原文をもとに、健康食品の原料を判定するときに引く名簿を整理し、越境ECと一般貿易でどちらが効くのかを分けて書きます。化粧品については同じ構造の記事を中国で使えない化粧品成分はどう調べるのかで公開していますので、化粧品を扱う方はそちらをご覧ください。

「越境ECなら登録不要」はどこまで本当か

中国で機能をうたう食品は「保健食品」という区分にあたり、中国国内で販売するには注册(登録)または備案(届出)を経て、通称「藍帽子」と呼ばれる標識を取得する必要があります。これが一般貿易で輸入する場合の原則です。制度の全体像は化粧品・健康食品のNMPA・規制実務で扱っています。

これに対して越境EC(保税区モデル・直送モデル)では、輸入される商品が「個人自用物品」として扱われ、初回輸入の許可批件・注册・備案を執行しない扱いになっています(商財発〔2018〕486号)。日本のサプリメントを日本のパッケージのまま中国の消費者に届けられるのは、この枠組みがあるためです。

ここから先が、多くの解説が触れていない部分です。486号が免除しているのは手続きであって、原料に関する中国側の考え方そのものを無効にするものではありません。実務では次の3つが残ります。

  • 中国で食品や保健食品の原料として扱われていない物質を配合している場合、通関やプラットフォームの審査で問題になり得ること
  • 越境ECで販売する商品に、中国国内向けの保健機能(保健功能)を標榜できないこと。これは食品の表示・広告規制の側から効く論点で、486号そのものに書かれているわけではありません
  • 将来一般貿易に切り替える段階では、免除がなくなり、原料の名簿がそのまま審査基準になること

つまり「登録不要」は入口の話であり、原料の可否は別のレイヤーで残り続けます。参入の向き・不向きそのものを整理したい場合は越境ECのリスクと向き不向きもあわせてご覧ください。

原料の可否を判定するために引く4つの名簿

中国側で健康食品の原料を判断するときに参照される名簿は、大きく次の4つです。いずれも「制度の解説」ではなく、原料名で引く一覧です。

名簿根拠となる公告これで分かること
按照传统既是食品又是中药材的物质目录(いわゆる药食同源) 卫法监发〔2002〕51号の附件1「既是食品又是药品的物品名单」を出発点に、その後の公告で追加 伝統的に食品としても中薬材としても使われてきた物質。普通食品の原料としても使える範囲
可用于保健食品的物品名单 卫法监发〔2002〕51号 附件2 保健食品の原料としてなら使える物質。普通食品には使えない
保健食品禁用物品名单 卫法监发〔2002〕51号 附件3 保健食品に使ってはならない物質
新食品原料(旧・新资源食品) 国家衛生健康委員会の審査・公告(受理公示は継続的に更新) 上の3つに載っていない新しい素材を使うには、安全性審査を経て公告される必要があること

1つ目から3つ目までは、出所がいずれも同じ通知です。衛生部「関于進一歩規範保健食品原料管理的通知」(卫法监发〔2002〕51号・2002年2月28日発布)が、この3つの名簿を附件として示しました(出典:国家衛生健康委員会 政務服務平台に掲載の原文、2026年9月21日閲覧)。同通知は名簿だけでなく、新資源食品・食品添加剤・真菌や益生菌・保護動植物の扱い、さらに動植物由来の原料を配合する場合の個数の上限といった配合設計上の制約も定めています。

4つ目の新食品原料は、名簿というより手続きです。3つの名簿のいずれにも載っていない素材を中国で食品として使うには、安全性評価を経た公告が要ります。国家衛生健康委員会の政務服務平台では新食品原料の受理公示が随時掲載されており、2026年9月だけでも1日・7日・14日・20日付の受理公示が出ています(同平台、2026年10月5日閲覧)。制度が現に動いていることの裏返しであり、「今は載っていないが今後載る素材がある」という前提で読む必要があります。

药食同源の「最新版一覧」は官報に存在しない

ここが実務でいちばん間違えやすい点です。药食同源の物質は、一枚の「最新版目録」として公表されているわけではありません。2002年の通知で示された一覧に、その後の公告が積み上がっていく形になっています。近年の追加は次のとおりです。

公告追加された物質
国家衛生健康委員会・国家市場監督管理総局 公告2023年第9号(2023年11月) 党参、肉苁蓉(荒漠)、铁皮石斛、西洋参、黄芪、灵芝、山茱萸、天麻、杜仲叶 の9種
国家衛生健康委員会・国家市場監督管理総局 公告2024年第4号(2024年8月12日発布/8月26日掲載) 地黄、麦冬、天冬、化橘红 の4種

2024年の公告は、根拠として食品安全法およびその実施条例と「按照传统既是食品又是中药材的物质目录管理规定」を挙げ、安全性評価を経て4種を目録に組み入れる、と書いています(出典:国家衛生健康委員会 公告2024年第4号の原文、2026年9月21日閲覧)。

そのうえで、数の扱いには注意が要ります。中国語のニュースサイトなどでは「药食同源は102種」「106種」といった件数を掲げた一覧が流通していますが、本稿で確認した範囲では、2002年の通知の本文に各名簿の件数は書かれていません。追加の公告も「◯種を組み入れる」と書くだけで、合計の宣言はしていません。件数は各所が独自に数えたものであり、当局が確定値として示した数字ではないという前提で扱うのが安全です。

実務上の意味はひとつです。件数や「最新版一覧」を根拠に判定せず、自社が使う原料について、追加の公告を含めて個別に当たる。そして確認したら、公告番号と閲覧日を社内の記録に残しておく。名簿は更新されるので、半年前の確認結果はそのままでは使えません。

注册と備案の分かれ目 ――「保健食品原料目録」に載っているか

ここまでは「その原料を使ってよいか」の話でした。一般貿易に進む段階になると、もうひとつ別の目録が効いてきます。保健食品原料目録です。

中国の保健食品には、注册(審査を経た登録)と備案(届出)の2つのルートがあります。食品安全法 第七十六条は、保健食品原料目録にない原料を使う保健食品と、初めて輸入する保健食品は注册としたうえで、初めて輸入するもののうちビタミン・ミネラルなどの栄養物質を補充するものは備案とし、それ以外の保健食品も備案としています。国内で製造する製品なら、目録に載った原料を使うかどうかが分かれ目になります。日本から輸入する製品は、目録への収載に加えて「栄養素の補充にあたるか」でも分かれます。輸入品の備案の範囲がその後の運用でどこまで広がっているかは、申請前に当局の最新の公告で確認してください(要確認)。届出と登録では必要な時間もコストも大きく変わるため、処方設計の段階で効いてくる分かれ目です。

目録は、栄養素補充剤(ビタミン・ミネラル類)を中心に構成されてきましたが、それ以外の原料も追加されています。国家市場監督管理総局・国家衛生健康委員会・国家中医薬管理局は公告2020年第54号(2020年12月1日発布)で「辅酶Q10等五種保健食品原料目録」を公布し、2021年3月1日から施行しました。対象は辅酶Q10(コエンザイムQ10)、破壁灵芝孢子粉、螺旋藻(スピルリナ)、鱼油、褪黑素(メラトニン)の5つです(出典:国家市場監督管理総局のウェブサイト掲載の公告原文、2026年9月21日閲覧)。

目録は追加されていくため、国内製造では「今は注册ルートしかない原料が、数年後には備案で通る」ということが起こります。一般貿易への移行を将来の選択肢に置いているのであれば、自社の主力原料が目録の議論に上がっていないかを定期的に見ておく価値があります。

越境ECで実際に効いてくるのはどこか

では、越境ECで販売する場合に何を確認すればよいのか。ここは正直に書いておきたい点があります。保健食品の原料名簿が、越境EC商品に対して法的にどこまで及ぶのかは、本稿の調査では一次資料で確認できませんでした。越境ECの商品は個人自用物品として扱われ、保健食品としての登録手続きの外に置かれているためです。したがって「名簿に載っていないから中国では違法」と断定することはしません。

そのうえで、越境ECの実務で確実に効いてくるのは次の3つです。

効いてくるもの内容
ポジティブリスト(正面清単) 越境EC小売輸入で扱える商品は税則号列(HS8桁)単位のリストで決まります。品目の可否はここで切られます。引き方は越境ECのポジティブリスト(正面清単)とはで解説しています
プラットフォームの規則 天猫国際などのモールは、カテゴリごとに出店資質と商品の発布規範を定めています。健康食品は規制が厳しいカテゴリに分類され、中国国内の受託企業に関する要件も加わっています(天猫国際の越境EC食品規制)
表示・広告の規制 中国国内向けに保健機能を標榜することはできません。日本で機能性表示食品として届け出ている内容を、そのまま中国の商品ページに訳して載せることはできない、という意味です

加えて、越境ECを「一般貿易へ進む前の検証段階」と位置づけているのであれば、名簿の確認は先送りにしないほうが合理的です。越境ECで売れた処方が、一般貿易では原料の段階で通らないという順番になると、検証そのものが次につながりません。税や価格設計を含めた全体像は越境ECの税金はいくらかかるのかで整理しています。

自社のサプリを1行ずつ確認する手順

ここまでを、手を動かせる形にまとめます。成分表を開いて、上から1行ずつ進めてください。

  1. 原料名の中文名を確定する。日本語名やブランド名では名簿を引けません。基原(植物の学名と使用部位)まで押さえます。同じ「エキス」でも、根を使うか葉を使うかで扱いが変わることがあります
  2. 药食同源の目録を引く。2002年の通知の附件1に加えて、2023年第9号・2024年第4号のような追加公告も見ます
  3. 可用于保健食品的物品名单を引く。ここに該当する場合、普通食品ではなく保健食品の原料としての位置づけになります
  4. 保健食品禁用物品名单を引く。該当した時点で、その原料は処方から外すか、中国向けの処方を分ける判断になります
  5. いずれにも載っていなければ、新食品原料の公告を確認する。公告されていない新規素材であれば、一般貿易のルートは審査からということになります
  6. 越境ECルートなら、品目のHSコードでポジティブリストを引き、出店予定のプラットフォームの規則を確認する。確認した公告番号・ページ・閲覧日を記録に残します

この作業は、社内で完結できる範囲がかなりあります。少なくとも「どの原料が論点になり得るか」までは自社で洗い出せますし、そこまで絞れていれば、外部の専門家に聞くときの質問も具体的になります。参入判断そのものの進め方は越境ECの始め方 — 手順より先に「決める順番」にまとめています。

よくある3つの誤解

「登録不要だから、何を入れても越境ECなら売れる」。免除されているのは登録の手続きです。ポジティブリストの枠、プラットフォームの審査、表示・広告の規制はそのまま残ります。

「药食同源に入っている素材なら自由に使える」。目録に組み入れられた物質についても、国家衛生健康委員会が2024年第4号の公告にあわせて出した解説(解读)は、伝統的な方法で適量を食べることを勧め、妊婦や授乳期の女性、乳幼児といった特定の集団には勧めないとしています。無制限に使える許可証ではありません。

「日本で機能性表示食品だから、中国でも同じ機能を書ける」。日本の届出制度は中国では効きません。越境ECでは保健機能を標榜できず、一般貿易で機能をうたうには保健食品としての注册または備案が必要です。

よくある質問

Q. 越境ECで健康食品を売るのに、中国での登録は本当に不要ですか。
A. 越境EC(保税区モデル・直送モデル)では、初回輸入の許可批件・注册・備案を執行しない扱いになっています(商財発〔2018〕486号)。ただし免除されるのは登録の手続きであり、扱える品目の範囲(ポジティブリスト)やプラットフォームの審査、表示・広告の規制は別途かかります。

Q. 药食同源の最新の一覧はどこで見られますか。
A. 一枚の最新版として公表されているものは、本稿で確認した範囲では見当たりません。2002年の衛生部通知(卫法监发〔2002〕51号)の附件を出発点に、国家衛生健康委員会と国家市場監督管理総局の公告(2023年第9号、2024年第4号など)が追加されていく形です。自社の原料については、追加の公告を含めて個別に確認するのが確実です。

Q. 「药食同源は102種」と書かれている記事を見ました。正しいですか。
A. 件数は各所が独自に数えたものです。2002年の通知の本文に件数の記載はなく、追加の公告も合計数を宣言していません。件数を根拠に判定せず、原料名で引くことをおすすめします。

Q. 注册と備案はどちらになるか、どこで決まりますか。
A. 食品安全法 第七十六条が基準です。目録にない原料を使う製品と、初めて輸入する製品は注册が原則で、初めて輸入する製品のうちビタミン・ミネラルなどの栄養物質を補充するものは備案です。国内製造なら、目録に収載された原料を使うかどうかが分かれ目になります。目録には栄養素補充剤のほか、公告2020年第54号(2021年3月1日施行)で辅酶Q10・破壁灵芝孢子粉・螺旋藻・鱼油・褪黑素の5つが加えられています。

Q. 名簿のどれにも載っていない独自素材を使っています。中国では売れないということですか。
A. 一般貿易で保健食品として売る場合は、新食品原料としての安全性審査と公告が前提になります。越境ECについては本稿では断定しませんが、少なくとも「審査を通っていない素材を主役にした訴求」は、プラットフォームの審査や表示規制の側でリスクが高くなります。処方を中国向けに分ける検討も含めて、早い段階で論点として置いておくべき項目です。

まとめ

越境ECで中国向けに健康食品を売るとき、登録の手続きは免除されます。しかし、その原料を中国で食品として使ってよいかという問いは残ります。判定は制度の解説を読むことではなく、原料名で名簿を引く作業です。引くのは药食同源の目録、可用于保健食品的物品名单、保健食品禁用物品名单、そして新食品原料の公告の4つで、最初の3つは2002年の同じ通知に由来します。

そして、药食同源の目録には「最新版の一枚もの」がありません。追加の公告を自分で積み上げて確認し、公告番号と閲覧日を記録しておく。この地味な作業が、社内で参入可否を語るときの根拠になります。

当社では、原料や成分の論点を含めた参入可否の見立てを、市場調査の段階からお手伝いしています。見立ての結果として参入を見送るべきという結論になる場合も、根拠とあわせて率直にお伝えします。

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