JETRO「JAPAN MALL事業」とは — 無料で始める海外販売と、越境ECの使い分け

JETRO JAPAN MALL事業とは 無料で始める海外販売と越境ECの使い分け

JAPAN MALL(ジャパンモール)事業は、JETRO(日本貿易振興機構)が世界各国の海外ECバイヤーと連携し、日本企業の商品を海外のECサイトで販売につなげる、参加無料のマッチング支援です。日本企業は「Japan Street」という商品カタログサイトに登録し、バイヤーとの商談が成約すれば、原則として日本国内への納品・円建て決済・全量買取という形で取引が完結します。輸出手続きや在庫リスクを大きく負わずに海外販売を試せるのが特徴で、輸出未経験の企業にも向いた入口です。本記事では、その仕組みと費用、そして自社で本格的に越境ECへ出店する場合との使い分けを整理します。

JAPAN MALL事業とは:JETROが海外EC販売をつなぐマッチング支援

JAPAN MALL事業は、海外のECバイヤー(現地のEC事業者・小売・商社)の調達を支援し、現地でのプロモーションを通じて日本商品の認知度向上と販売促進をはかることを目的としたJETROの事業です。JETROが複数の国・地域のバイヤーと連携しており、そのニーズに合う日本商品を紹介する「マーケットイン型」のマッチングを行います。

入口となるのが、招待制の商品カタログサイト「Japan Street」です。ここに日本企業が商品を登録しておくと、JETROが連携バイヤーの希望に応じて商品を紹介し、引き合いがあれば商談へと進みます。JETRO公式資料によれば、Japan Streetには約1.1万社の日本企業が商品を登録し、約7,000人以上の海外バイヤーが利用しているとされています(出典:JETRO事業詳細資料)。まず海外での反応を見たい、という段階の企業がとりあえず登録しておく、という使われ方に向いています。「小さく試してから広げる」という考え方は、天猫国際『探物』でまず試すの記事でも触れています。

仕組み:誰に、どう売るのか

この事業の性格を理解するうえで最も大事なのは、日本企業が商品を売る相手は「JETROが束ねた海外バイヤー」であって、現地の消費者やECモールに直接出店するわけではないという点です。商流を並べると次のようになります。

段階誰が何をするか
① 登録日本企業が「Japan Street」に商品を無料登録する
② 紹介・商談JETROが連携バイヤーのニーズに合う商品を紹介し、商談をサポート(通訳等も含む)
③ 成約・納品原則、日本国内の指定先(商社等)へ納品/円建て決済/バイヤーが全量買取
④ 販売・PRバイヤーが自社ECや現地ECサイト等で販売。JETROとバイヤーが共同でプロモーション

成約後の取引条件は、原則として「日本国内の指定先への納品・円建て決済・全量買取」です(出典:JETRO事業詳細資料)。バイヤーが全量を買い取るため、海外現地での在庫リスクを日本企業が抱えにくい設計になっています。輸入・現地での販売・在庫管理・顧客対応といったEC運営の実務は、買い取ったバイヤー側が担います。日本企業から見れば、国内に納品して円で受け取る「売り切り」に近い形です。

対象者・対象商材・費用

対象となるのは日本企業(海外進出した日系企業を含む。日系企業の場合は日本側の出資比率10%以上)です。対象商材は、食料品・飲料、日用品、生活雑貨、化粧品などの消費者向け製品が中心です。

参加費用は無料です。ただし、一部の連携先には任意参加の「有料オプション」があります。無料参加の場合は「日本商品全体の特集ページで紹介する」といったプロモーションが中心で、個別商品ごとの販売データは提供されません。個別商品にSNS広告・インフルエンサー広告・ライブコマース等を打ち、販売結果やバイヤーの反応まで受け取りたい場合は有料オプションを選ぶ形です。中堅・中小企業には費用の一部をJETROが割引補填する仕組みがあり、JETRO公式資料では補填後の目安として「1商品あたり6万円程度」と示されています(金額は連携バイヤーにより異なり、審査があります)。

参加の流れ(5ステップ)

登録から販売までは、大きく5つのステップに分かれます。

ステップ内容
01 商品登録招待制カタログ「Japan Street」に商品を登録(無料)
02 ご商談JETROが連携バイヤーへ商品を紹介。引き合いがあった企業にJETROから連絡し、商談をサポート
03 ご成約(納品)原則、日本国内の指定先へ納品・円決済・全量買取で完結
04 参加登録成約した企業にのみJAPAN MALLの参加登録案内が届く。あわせて有料オプションの有無を回答
05 プロモーションバイヤーが現地ECサイトや小売店等でプロモーションを実施。概要は後日フィードバック

登録しただけで必ず取引が成立するわけではなく、あくまでバイヤーからの引き合い・成約があってはじめてJAPAN MALLの本登録に進む、という点は押さえておきましょう。連携バイヤーは米国・欧州・東南アジア・中国など複数の国・地域にわたります。中国については日本の商社等が連携先として掲載されていますが、公式サイト上では特定のECモール名までは明示されていないため、どのプラットフォームで販売されるかは個別の商談で確認するのが確実です。取り扱えるモールの全体像は中国ECプラットフォーム比較もあわせてご覧ください。

メリットと、知っておきたい注意点

JAPAN MALL事業のメリットは明快です。参加無料で、輸出手続きや外貨決済が要らず、在庫リスクも負いにくい。JETROが商談をサポートするため言語や交渉の不安も小さく、輸出未経験でも海外販売を試せます。一方で、無料・低リスクである裏返しとして、次の点は最初に理解しておくべきです。

  • 成約はバイヤーの調達判断次第で、継続発注の保証はない。需要次第でスポット的な取引にとどまることもあります。
  • 小売価格はバイヤーが決める。JETROの参加要件では、売れ行きに応じてバイヤーが小売価格を変更・割引することに同意することが前提とされています。自社で価格やブランドの見せ方を握るのは難しい設計です。
  • 顧客データは基本的にバイヤー側に蓄積される。自社での会員化やリピート育成(LTVの積み上げ)には直結しにくい面があります。
  • プロモーションの内容はバイヤーごとに異なり、日本企業側の細かい要望には応えられないとされています。

つまりJAPAN MALLは、「海外・中国で自社商品が売れるかどうかを、低リスクで確かめる」用途にはとても有効な一方、価格やブランディング、顧客との関係を自社で設計・蓄積していく本格展開の器としては、構造上の限界があります。ここを取り違えなければ、非常に使い勝手のよい制度です。

自社での越境EC出店との使い分け

海外・中国のECへの参入には、投資とコントロールの度合いが異なる複数の入口があります。JAPAN MALLはその最も手前に位置づくもので、本格的に売っていくフェーズでは自社での出店・運営が選択肢になります。整理すると次のようになります。

観点JAPAN MALL(JETRO・無料マッチング)自社での越境EC出店・運営
売る相手JETRO連携バイヤー(B2Bの卸)現地の消費者(自社旗艦店・直営店等)
決済・納品国内納品・円建て・全量買取保税区/直送+在庫・返品・物流を自社で管理
在庫・返品リスク主にバイヤー側(売り切り)自社側
価格・ブランディングバイヤーが決定(統制は弱い)価格・ページ・販促を自社で設計できる
顧客データ蓄積しにくい会員・購買データを蓄積できる
費用無料(任意の有料オプション)運営費・広告費等の本格投資
向くフェーズまず低リスクで反応を見たい初期テストブランド構築・継続販売・本格展開

なおJETRO自身も、特定プラットフォームへの有料の出品支援プログラムを実施することがあります(例:米英Amazon向けの「JAPAN STORE」プログラムなど。過去には天猫国際の直営店出品支援も募集されました)。これらはJAPAN MALLの全量買取スキームとは別の枠組みで、内容や募集の有無は年度により変わるため、利用を検討する際はJETROの最新情報を確認してください。天猫国際そのものの仕組みは天猫国際(Tmall Global)とはで解説しています。

まとめ:まず試す入口として

JAPAN MALL事業は、参加無料・低リスクで海外販売を試せる、優れた「入口」です。輸出未経験でも、在庫リスクを負わずに海外バイヤーとの取引を経験でき、自社商品が海外市場でどう受け止められるかを確かめられます。まず反応を見たい段階の企業にとって、有力な選択肢のひとつといえます。

一方で、価格やブランディングを自社で握り、顧客との関係を積み上げて継続的に売っていく段階になると、自社での越境EC出店・運営が必要になります。JAPAN MALLで手応えをつかんだあと、本格展開のフェーズへどう移っていくか——ここは専門的な設計と運営が問われる領域です。エフカフェでは、天猫国際をはじめとする中国越境ECの出店から日々の運営までを日本語でご相談いただけます。JAPAN MALLのような制度の活用も含め、自社にとってどの入口が合うのか、現状の整理からお手伝いできます。

よくある質問

JAPAN MALL事業は本当に無料で参加できますか?

基本の参加は無料です。Japan Streetへの商品登録もJAPAN MALLへの参加登録も費用はかかりません。ただし、一部の連携バイヤーには個別商品のプロモーションを行う任意の「有料オプション」があり、これを選ぶ場合のみ費用が発生します。中堅・中小企業には費用の一部をJETROが割引補填する仕組みがあります。

JAPAN MALLと、自分で天猫国際に出店するのは何が違いますか?

JAPAN MALLは、日本国内でバイヤーに全量買取してもらう「卸に近い」形で、在庫リスクや現地運営を負いません。その代わり価格やブランディングはバイヤーが決めます。自社で天猫国際などに出店する場合は、費用と運営の手間はかかりますが、価格・ページ・販促・顧客データを自社でコントロールできます。まず試すならJAPAN MALL、本格展開なら自社出店、という使い分けが基本です。

中国のECモールでも販売してもらえますか?

中国も連携対象に含まれますが、公式サイトには連携先として日本の商社等が掲載されており、天猫国際や京東といった特定のプラットフォーム名までは明示されていません。実際にどのモールで販売されるかは、個別の商談のなかで確認するのが確実です。

登録すれば必ず海外で売れますか?

いいえ。Japan Streetへの登録は商談の「入口」であり、実際の取引はバイヤーからの引き合い・成約があってはじめて成立します。継続的な発注が保証されるものでもないため、需要次第でスポット的な取引にとどまることもあります。

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JAPAN MALLから試すか、自社出店から入るか。どちらが自社に合うかの整理は個別のご相談でも承っています。

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※本記事は、JETRO(日本貿易振興機構)の「JAPAN MALL事業」公式ページおよび事業詳細資料「2026年度 JAPAN MALL」にもとづき作成しています(参照:jetro.go.jp/services/japan_mall.html)。参加要件・費用・連携先・対象商材は年度や連携バイヤーにより変わる場合があるため、参加を検討する際は最新の公式情報をあわせてご確認ください。

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