天猫国際の返品・返金ルール【2026年9月改定】 — 「いくら返すのか」と税費の負担区分

天猫国際の返品・返金ルール2026年9月改定 — 返金額と税費の負担区分

天猫国際(Tmall Global)で保税区モデルの商品が返品された場合、商家は消費者が実際に支払った商品代金を全額返金することになり、輸入時の税金を払ったことを理由に返金額を減らすことはできません。対象は商品が受領された翌日0時から168時間(7日)以内の申請で、返された商品が二次販売に影響しないことが前提です。これは2026年9月2日に公示され、2026年9月11日に施行された《天猫国际争议处理规范》の改定内容です。

中国向け越境ECの返品について日本語で調べると、出てくるのは物流と通関の話がほとんどです。返された商品を保税倉庫で再販するのか、現地で処分するのか、日本へ戻すのか。それも大事な論点ですが、損益計画を立てるときに先に必要なのは別のことです。返品されたとき、いくら返さなければならないのか。そして、その負担は誰に来るのか。この記事では、2026年9月に相次いで改定された天猫国際の規則2本を原文にあたって、返金額の計算という一点から整理します。

2026年9月、天猫国際の返品ルールは何が変わるのか

2026年8月末から9月初めにかけて、天猫国際は返品・クレーム対応に関わる規則を2本続けて公示しました。ひとつは返金額と税費の負担、もうひとつは品質問題での賠償です。どちらも既に出店している企業にとっては運用の変更を伴う内容です。

改定された規則公示日/施行日要点
《天猫国际争议处理规范》税費争議処理
《"跨境放心退"服务规范》
公示 2026年9月2日
施行 2026年9月11日
保税区モデルの商品について、7日以内の主観的理由による返品では商品代金を全額返金する。税費を理由に減額できない。返金額から税費・送料を引けるかどうかの区分を整理
《出售描述不符或品质存在问题的商品规则及实施细则》 公示 2026年8月27日
施行 2026年9月2日
説明と違う商品・品質に問題のある商品を販売した場合、プラットフォームが消費者に賠付金を支払う制度を新設

(出典:天猫国際 規則公示 ruleId 20010746/ruleId 20010716)

いずれも天猫国際の公示通知の原文で確認した内容で、2本とも施行日を過ぎています(本記事は2026年9月14日時点で公示通知の内容に変更がないことを確認しています)。中国のプラットフォーム規則は施行後も改定が重なるため、実際に運用へ反映するときは最新の原文にあたってください。

返品を受けたとき、いくら返すことになるのか

今回の改定でいちばん実務に効くのは、《"跨境放心退"服务规范》に示された返金額の上限の区分です。消費者に返る最大金額が、発送方式と、送料・税金を商家が持っているかどうかの組み合わせで決まる形に整理されました。

発送方式送料・税金の負担買い手に返る最大金額
越境EC保税輸入商品
(保税区モデル)
送料込み・税金込み 実際に支払った金額
送料込み・税金は別 実際に支払った金額 − 実際の税費
送料は別・税金込み 実際に支払った金額 − 送料
送料は別・税金も別 実際に支払った金額 − 実際の税費 − 送料
海外直郵および
越境EC集荷輸入商品
4つの組み合わせすべて 実際に支払った金額 − 実際の税費 − 送料

(出典:天猫国際《"跨境放心退"服务规范》更新内容、ruleId 20010746)

表の下段に注目してください。海外直郵と集荷輸入は、送料込み・税金込みで売っていたとしても、返金の上限からは税費と送料が引かれる形になっています。一方の保税区モデルは、送料込み・税金込みで売っていれば実際に支払った金額がそのまま返金の上限です。同じ商品を同じ価格で売っていても、どの発送方式を選んでいるかで返品時の金額が変わるということです。

この違いは、モデル選択の判断材料としてはあまり語られてきませんでした。保税区モデルと直郵の比較は通常、リードタイムと在庫リスク、初期費用の観点で語られます。返品時の返金上限という切り口を足すと、比較の軸がひとつ増えます。モデルごとの物流の考え方は中国向け越境EC 物流ガイドで整理しています。

「税金を払ったから満額は返せない」が通らなくなる

改定の核心は《天猫国际争议处理规范》第十三条の退货规范にあります。保税区モデルの注文について、消費者が受領後7日以内に主観的な理由で返品・返金を申請し、売り手の承認またはプラットフォームの介入による承認があった場合、返された商品が二次販売に影響しない前提で、売り手は買い手が実際に支払った商品代金を全額返金しなければならず、値引きや減額を求めてはならないと書かれています。

そのうえで、税費の負担は商品ページの表示で切り分けられます。

商品ページの表示税費の負担者商家に課されること
「商品已包税」
または「商家承担」
商家 すでに税費を代納していても、輸入税費を納付済みであることや税費を差し引く必要があることを理由に、買い手へ値引きや返金額の減額を求めることはできない
「进口税:XX元」 消費者 税費の納付証明を提供する必要がある

(出典:天猫国際《天猫国际争议处理规范》第十三条 退货规范、ruleId 20010746)

ここで押さえておきたいのは、この条文が返金額をめぐる交渉の余地を閉じているということです。輸入時に納めた税金は、商品が返品されたからといって自動的に戻ってくるものではありません。それでも「包税」で売っていたのであれば、その分を消費者への返金から引くことはできない、という整理になります。税費は商家側の費用として残ります。

逆に「进口税:XX元」と明示して消費者に負担させている場合は、税費は消費者負担のままですが、商家には納付証明を出す義務が生じます。証明を出せなければ、その主張は通らないという構造です。中国の越境ECにかかる税金の全体像は越境ECの税金で解説しています。

実務上の含意はシンプルです。商品ページを「包税」で作るか「进口税:XX元」で作るかは、単なる表示上の選択ではなく、返品が発生したときにどちらが税費を負担するかを決める選択になります。価格の見せ方を決める段階で、返品率をどう見込むかまで含めて考える必要があります。

期間は7日。ただし起算点が日本の感覚と違う

返品を受け付ける期間について、規則本文は具体的な数え方を示しています。物流上の受領(签收)の翌日0時から起算し、満168時間で7日とする、という書き方です。日付の切り替わりではなく時間で数えるため、受領が何時であっても、その日の残り時間は7日のカウントに含まれません。

条文が「主観的な理由で取引を完了したくない場合」と書いていることも重要です。商品に不具合があるかどうかを問わず、気が変わったという理由でも対象になります。一方で「返された商品が二次販売に影響しない」ことが前提条件として明記されているため、開封・使用された商品がすべて同じ扱いになるわけではありません。この線引きの運用が、実務上の争点になりやすいところです。

なお、日本語で読める解説のなかには、天猫国際では15日間の無理由返品が標準になっている、という記述も見られます。ただし当社が今回確認した限りでは、その期間を裏づける規則本文は見つけられませんでした。公式規則で確認できるのは7日(168時間)です。返品期間を前提に運用を設計するのであれば、規則の原文か、天猫国際の担当者の案内で確かめてから決めることをおすすめします。

もうひとつ、保税区モデルの商品は税関の監督下にあり返品された商品を再販できないため無理由返品の対象外である、という説明もよく見かけます。今回の改定内容は、少なくとも保税区モデルの注文について7日以内の主観的理由による返品を扱う条文を置き、二次販売に影響しない前提で全額返金を求めています。「保税だから無理由返品は来ない」という前提で計画を組んでいる場合は、見直しが必要です。

返品とは別枠で、賠付金という費用が乗る

もう1本の改定は、2026年9月2日に施行された《出售描述不符或品质存在问题的商品规则及实施细则》の追加規定です。説明と違う商品や品質に問題のある商品を販売し、消費者が受領後にプラットフォームへ申し立てや投訴を行い、天猫国際が多角的に総合認定した場合、プラットフォームが消費者に賠付金を支払うという仕組みが新設されました。

賠付金の計算基準は、当該商品の実際の成約金額の10%です。1件の取引につき最低5元を下回らず、最高200元を超えないという上下限が置かれています。特殊な状況を除き、違反の程度と消費者の権益が損なわれた程度に応じて、毎回この方式で賠付するとされています(出典:天猫国際 ruleId 20010716)。

この規定には併記されている点が2つあります。ひとつは、抜き取り検査(抽検)で品質に問題があると認定された場合は《天猫国际商品抽检行为规范总则》に従うとされていること。もうひとつは、消費者がこの規則を濫用して賠付申請を行った場合、天猫国際は賠付を支持しないと明記されていることです。無条件に支払われる制度ではありません。

また、規則は賠付金と並んで、違反の程度に応じた市場管理措置も挙げています。違反商品や情報の処置、経営権限の管制、アカウント権限の管制、Alipayアカウントの管制、注文の停止、店舗全商品の非表示といった措置です。金額の面では1件あたり最大200元でも、積み上がった先に経営権限そのものへの影響があるという構造で読んでおいたほうがよいでしょう。規制・コンプライアンス全般の考え方は中国EC 法規制・コンプライアンスにまとめています。

戻ってきた商品はどうなるのか(混同されやすい話の整理)

返品された商品そのものの処理は、返金額の話とは別の論点です。保税倉庫に戻して二次販売の対象にできるか、現地で処分するか、日本へ戻すか。ここは扱う商品のカテゴリと保税区の運用に依存するため、一般論で断定できる部分は多くありません。

ひとつ注意しておきたいのは、この文脈でよく引用される中国の税制優遇が売る方向が逆の制度であることです。中国の財政部ほか3部門が2026年2月6日に公告した措置は、税関の監督管理方式コード「1210」「9610」「9710」「9810」で中国から輸出された商品が、売れ残りや返品を理由に輸出日から6か月以内に原状のまま再輸入される場合に、輸入関税と輸入段階の増値税・消費税を免除するというものです(食品は対象外)。適用期間は2026年1月1日から2027年12月31日までとされています(出典:ジェトロ ビジネス短信 2026年2月13日)。

これは中国の事業者が海外へ売った商品を戻すときの制度で、日本ブランドが中国へ売った商品の返品には直接あてはまりません。「越境ECの返品」という同じ言葉で語られるため混ざりやすいのですが、方向が違えば適用される制度も変わります。自社のケースがどちらなのかを確かめてから、制度の話を読んでください。

出店前に決めておく3つのこと

ここまでの内容を、出店前あるいは運用の見直し時に決めておくべき論点として整理します。いずれも返品が発生してから決めると条件の悪い側に転びやすい項目です。

1つめは、商品ページの税表示をどちらにするかです。「包税」にすれば消費者にとっての価格の分かりやすさは増しますが、返品時の税費は自社負担として残ります。「进口税:XX元」にすれば税費は消費者負担ですが、納付証明を出せる運用が必要になります。価格の見せ方と返品時の負担はセットの判断です。

2つめは、返品率と賠付金を織り込んだ価格設計です。返金は商品代金の全額が基本になり、そこに返送・処理の実費が乗り、説明不符や品質問題が起きれば賠付金が別枠で発生します。これらを見込まない粗利計算は、実績が出はじめてから合わなくなります。出店・運営にかかる費用構造そのものは天猫国際の出店費用で整理しています。

3つめは、二次販売の可否をどこで線引きするかを運営側と先に合わせておくことです。規則が全額返金の前提として置いているのは「返された商品が二次販売に影響しない」ことでした。開封済みをどう扱うか、外装の破損をどこまで許容するかは、判断する人によってぶれます。基準を文章にして共有していないと、承認するかどうかの判断が案件ごとに変わり、結果として争議が増えます。

よくある質問

天猫国際で返品されたら、商品代金は全額返さなければならないのですか。
保税区モデルの注文で、受領翌日0時から168時間(7日)以内に主観的な理由で返品・返金の申請があり、承認された場合は、消費者が実際に支払った商品代金の全額返金が求められます。前提として、返された商品が二次販売に影響しないことが条件です。これは2026年9月2日公示・9月11日施行の《天猫国际争议处理规范》第十三条の内容です。

輸入時に払った税金を返金額から差し引くことはできますか。
商品ページに「商品已包税」または「商家承担」と表示している場合はできません。すでに税費を代納していても、それを理由に値引きや返金額の減額を求めることはできないと規則に明記されています。「进口税:XX元」と表示して消費者負担にしている場合は税費は消費者負担ですが、商家が税費の納付証明を提供する必要があります。

返品期間は7日ですか、15日ですか。
当社が規則本文を確認した限りでは、7日(受領翌日0時起算・満168時間)です。15日という期間を示す記述も日本語の解説では見られますが、その根拠となる規則本文は確認できませんでした。運用を設計する際は原文または天猫国際の案内で確かめてください。

賠付金は返品の返金とは別に発生するのですか。
規則上は別の制度です。賠付金は、説明と違う商品や品質に問題のある商品について消費者が申し立て、天猫国際が認定した場合にプラットフォームが消費者へ支払うもので、金額は実際の成約金額の10%(1件あたり最低5元・最高200元)です。返品の返金額とどのように重なるかは規則本文からは読み取れないため、具体的なケースは担当者に確認することをおすすめします。

保税区モデルは無理由返品の対象外だと聞いていました。
そうした説明は日本語の解説でも見られますが、2026年9月11日施行の改定内容は、保税区モデルの注文について7日以内の主観的理由による返品を扱う条文を置いています。この前提で計画を立てている場合は見直しが必要です。

まとめ

2026年9月の改定で明確になったのは、天猫国際の返品が「商品をどう戻すか」より前に「いくら返すか」の問題であるということです。保税区モデルで包税で売っているなら、返金は消費者が支払った金額の全額。税費を理由にした減額はできません。海外直郵と集荷輸入では、返金の上限から税費と送料が引かれる形に整理されています。加えて、説明不符や品質問題では賠付金という別枠の費用が乗ります。

返品は、起きてから対処する問題ではなく、価格の見せ方と粗利の設計に先に組み込む変数です。商品ページの税表示、返品率を見込んだ価格、二次販売の線引き。この3つを先に決めておけば、返品が出はじめてからの判断がぶれません。

なお本記事の内容は、2026年9月14日時点の規則公示の原文にもとづいています。天猫国際の規則は改定が続くため、実際に運用へ反映する前に最新の原文で確かめてください。天猫国際そのものの仕組みは天猫国際(Tmall Global)とはで解説しています。

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