売上アップに直結する“本気”のユーザー理解。「わかってるつもり」から卒業する方法

「ECサイトでの売上を伸ばすために、CVRアップの方法を本気で考え抜こう!」ということで始まったこの連載。第1弾のテーマは「ユーザーを本気で知る」です。

むむ? ユーザーのことならいつだって考えてるし、知ってるよ」という方もいるかもしれません。確かに日ごろ目にするユーザーレビューやアンケート、顧客属性データなどもユーザーを知る手がかりにはなります。しかし、今回解説するのはもっと「本気で知る」ための方法です。

キャラクターデザイン◎材井千鶴 イラスト◎宮川綾子

ユーザーを本気で知るってなに?

ユーザーを本気で知る」って具体的にどういうことでしょうか?

ここで言う「ユーザーを本気で知る」とは、アナタのお店やサービスを、今、ユーザーはどのように評価していて、どのような心理状態で関わっているのか、ユーザーの「深層心理」に注目し、商品やサービスに触れる前の行動や心理、購入後の状態まで理解を深めていくことを指しています。

ユーザーについて理解を深めていくことで、心理に即した施策を的確に打ち出していけるようになりますし、お店やサービスのデザインやキャッチコピーも、ユーザーにとってより「刺さる」、ニーズに合ったものを作れるようになります。

例えば、同じ商品を扱う店舗が複数ある場合、店舗担当者は「ユーザーは価格で選ぶだろう」と考えて他店よりも安く提供しようとします。これはこれで正しいのですが、「あるユーザー層」には刺さらない場合があります。

あるユーザーは「誰から買うのか」を重要視し、信頼のある企業からの買い物を好みます。サイトの会社概要は必ずチェックし、社長の顔が掲載されていると安心する……。このように日常の買い物に「信頼」を最重要視するユーザーは実在します。

そのようなユーザーの心理を理解すると、最良の計画は、「他店よりも安く」ではない場合もあります。ユーザーの心理を理解し、応えていく。すると、ユーザーの「良い体験」へとつながります。「良い体験」をしたユーザーは、お店やサービスのファンになります。

ユーザーを本気で知ると、目の前の課題解決だけではなく、将来的なファン層を作ることができるのです。

どうやってユーザーを本気で知るの?

では早速、「ユーザーを本気で知る」ための方法を3つご紹介します。
これら方法はマーケティングの基本であり、ユーザーを本気で知るのに大いに役立ちます。

1.ペルソナ
2.カスタマージャーニーマップ
3.ユーザーテスト

上記はどれも、仮説を立ててユーザーにアプローチし、分析するための方法です。実例を挙げながら紹介します。

方法1. ペルソナ

ペルソナとは、企業が提供する商品やサービスにとって最も重要で、かつ象徴的なユーザー像のことです。

ユーザーとはどんな人物か、「30代 男性 関東在住 既婚」といった属性だけの「ターゲット」ではなく、趣味や嗜好、行動パターンまで詳しく設定します。

ペルソナの重要性をお話するたびに、このような声を聞きます。

「ターゲット」じゃダメなの?
ペルソナだけに絞るのって不安。だっていろんなユーザーがいるし。
ペルソナを作ってみたけど、あまり役に立たなかった。

なぜ、「ターゲット」だけではいけないのか。なぜ「ひとりのペルソナ」(案件によってはペルソナを複数人作成することもあります)が必要なのか。それは、ペルソナを作成することで、広く漠然としたサービス提供ではなく、たった1人に刺さる、いわば究極のサービスを考えることができる からです。

実際の作成方法は次回の【実践編】で詳しくご紹介しますが、分析データなどの調査をもとに(←ココ重要!)、複数人で(←ココも重要!)ペルソナを作成すると、より的確なものになります。

ペルソナを活用できないという場合は、作成方法が正しくなかったか、活用方法が適していなかったと言えるでしょう。

実際のペルソナ活用例をご紹介します。ある食品企業でペルソナを作成しました。「関西在住の58歳女性。人付き合いや近所付き合いを大切にし、おすそ分けやお土産などのギフトは日常的。自分が良いと思ったものは、すぐに周囲におすそ分けしたくなる」というペルソナ視点で、サイト分析を行いました。

ペルソナからは「多くの人に配るために個包装を好む」と推察できましたが、サイトをチェックしてみると、そもそもギフトを購入するまでの導線がわかりにくく、ギフトの包装状態も不明確で個包装かどうかもわからず、安心して購入できない状態だということがわかりました。

そこで、ギフト周りのページを中心に改善した結果、想定した層によるギフト商品のCVRが、改善前より65%アップしました。

ペルソナを作ることでユーザーの姿を思い浮かべることができ、そのペルソナ像を関係者全員で共有し、サービスを作ることができるのも利点です。

方法2. カスタマージャーニーマップ

カスタマージャーニーマップとは、商品やサービスと、ユーザーが関わる部分を時間軸に沿って表(マップ)にしたものです。ユーザーと商品やサービスが触れ合うタッチポイント(接点)ごとに、ユーザーの体験を記入します。記入する際に時間軸に沿ったユーザーの心理状態や、起こした行動を詳しく記載します。

カスタマージャーニーマップを作成することで、ユーザーと企業の関係性を一覧できます。例えばなかなか売上が伸びないと悩む企業のカスタマージャーニーマップからは、タッチポイントの量や質が足りていないことなどが明らかになったりします。

他にも集客方法とユーザーの心理がマッチしていない、購入後のフォローが足りないなど、ユーザーの心理・行動をタッチポイントと照らし合わせてみることで、施策を立てるヒントが浮かび上がってきます。

方法3. ユーザーテスト

ユーザーテストはユーザーが実際に商品やサービスを使っている様子を観察し、分析するテストのことです。「ユーザビリティテスト」とも言います。

ECサイトでは、実際にユーザーにサイトでショッピングをしてもらう様子を観察することで、CVRまでにどのような問題点があるのか発見できます

ユーザーには企業側の都合は関係ありません。自分の経験やその時の気分でECサイトを利用するのです。その様子を観察することで、多くの改善のヒントが得られます。

実際にユーザーテストをやってみた中で、サイト内で大きく注意文が書かれていたにも関わらず、ユーザーはそれにまったく気付いていなかった、という例もありました。色や配置を工夫して、情報の注目度合いを変化させることはできます。しかし、それが本当にユーザーに理解されているかは、直接ユーザーに聞いてみなければわかりません

課題発見の手法としておすすめしたいユーザーテストですが、実施するには、機材やテストを受ける被験者の募集が必要なのでハードルは高め。まずは、知り合いの方にサイトを使ってもらうのも良い手でしょう。

ユーザーを本気で知ろうとし続けること、それが一番大事

どうやってユーザーを本気で知るのか、さまざまな手法があります。また、明確なゴールがあるわけでもありません。しかし、大切なのはユーザーを「わかっている」「知っている」と思うのではなく、ユーザーを本気で知ろうとする、その姿勢を持ち続けることです。

担当者の主観に頼ることなく、よりユーザーに「刺さる」方法で集客し、ユーザーが納得して商品やサービスを購入する。そして満足していただく「体験」へとつなげる。ユーザーを知らずしてCVRアップはなり立たないと言い切っても良いでしょう。

◇          ◇          ◇

「ユーザーを本気で知る」について熱く語ってしまいましたが、いかがでしたでしょうか。次回は実践編。ペルソナを作成する方法について、さらに詳しく解説します。

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