【2026年12月施行】中国の輸入化粧品 検査検疫ルール刷新 — 越境ECと一般貿易への影響
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中国税関(海関総署)は2026年5月6日、輸出入化粧品の検査検疫を定める新しい「中華人民共和国海関 輸出入化粧品検験検疫監督管理弁法」(海関総署令第284号)を公布しました。施行は2026年12月1日で、同日に2011年公布の旧弁法(国家質検総局令第143号・2018年改正)は廃止されます(出典:海関総署令第284号 第37条)。ただし第33条は、越境EC小売輸入(保税区モデル・直送モデル)の化粧品の検査検疫・監督管理について、本弁法の一般ルールではなく関連する規定に従うと定めており、天猫国際などで販売している日本ブランドの足元の手続きが直ちに変わるわけではありません。この記事では、新弁法と関連公告で何が変わるのかを一次資料ベースで整理し、越境ECで中国に商品を出している日本の化粧品メーカーがどこを見ておけばよいのかを説明します。
何が変わったのか — 2026年12月1日施行の新ルールを3点で
今回の改正は、化粧品の輸出入にかかる税関の検査検疫手続きを定めるルールの全面的な置き換えです。公布された文書は2本あります。ひとつが弁法本体である海関総署令第284号(2026年5月6日公布)、もうひとつが実施の細目を定めた海関総署公告2026年第61号(2026年5月11日公布)で、いずれも2026年12月1日から実施されます(出典:海関総署令第284号/海関総署公告2026年第61号)。
まず全体の方向を押さえておくと、今回の改正は、リスクにもとづく監督を強化する一方で、備案の廃止や検査地点の見直しによって企業の手続きを簡素化する内容です。海関総署自身の解読は主要内容を3本柱で示しており、第一に「リスク管理の理念を強化し、輸出入化粧品の監督の的確性・有効性を高める」ことを挙げ、第二の柱として改革成果の定着=企業の負担軽減を挙げています。負担軽減の側では「取消(廃止)」が並びます。輸入化粧品の収貨人(輸入者)の海関備案管理と輸出化粧品の生産企業の備案管理がいずれも廃止され、化粧品を指定・認可された場所に保管する要求も廃止されました。さらに初回輸入時の特殊管理要求も廃止され、検査を免除されるサンプルの適用範囲は拡大されています。加えて、施行までに6か月以上の政策移行期間が設けられました(出典:海関総署による本弁法の解読/新華網 2026年5月11日)。
つまり一般貿易で中国に化粧品を入れる際の入口の手続きは、この改正で軽くなる方向です。越境ECで需要を確かめてから一般貿易に進もうとしている日本ブランドにとっては、次の一手のハードルが下がる話だと受け取ってよいものです。
そのうえで、日本の化粧品メーカーの実務に関わりそうな変更を絞り込むと、次の3点になります。ひとつめは、輸入化粧品の検査を「申告先の目的地」で実施すると条文で定めたこと(第8条)。ふたつめは、従来から存在する輸入者の情報記録義務について、弁法第12条が保存期間を明記し、公告第61号が記録項目を具体化したこと。みっつめは、登録・備案用、検査・研究開発用、宣伝用といったサンプル類の通関上の扱いが明文で整理されたことです(同)。
なお、輸入化粧品が中国国家薬品監督管理局(NMPA)の特殊化粧品の登録(注册)または普通化粧品の届出(備案)を済ませていることを求める点自体は維持されており、新弁法では税関が電子データで自動的に照合するとされています(第6条)。「登録・届出がいらなくなった」という趣旨の改正ではないことに注意してください。
誰に効くルールなのか — 越境EC(保税区・直送)は条文上「別枠」
最初に押さえるべきは適用範囲です。新弁法の第33条は、越境EC小売輸入の化粧品の検査検疫・監督管理について、本弁法の一般ルールではなく関連する規定に従うと定めています(出典:海関総署令第284号 第33条)。条文は「本弁法を適用しない」と書いているわけではありませんが、一般ルールの適用対象からは切り分けられています。つまり、天猫国際などの越境ECルートで中国の消費者に販売している日本ブランドにとって、今回の改正は「自分たちの通関手続きが12月から変わる」という性質のものではありません。
この切り分けは、越境EC小売輸入が制度上「個人が自分で使うために輸入する物品」として扱われてきたことと整合します。中国では、越境EC小売輸入の商品を個人自用の進境物品として管理し、商品の初回輸入許可批件・注册または備案の要求を執行しないと定められています(疫区商品や重大な品質安全リスクへの応急処置は除く)(出典:商務部など6部門「越境電子商務小売輸入の監督管理に関する通知」商財発〔2018〕486号 第三項)。ただしこれは、登録・届出のない商品について中国国内で保健機能を標榜できることを意味しません。食品の表示・広告に関する規制は別途確認する必要があります。今回の弁法は、この越境ECの枠ではなく、いわゆる一般貿易で輸入される化粧品の検査検疫を対象としたルールだと理解するのが素直です。
では越境EC事業者に無関係かというと、そうとも言い切れません。多くの日本ブランドは、越境ECで需要を検証したうえで一般貿易へ進む段階論をとります(関連:天猫国際(Tmall Global)とは)。その「次の一手」に進んだ瞬間に適用されるのが、まさに今回のルールです。加えて、規制の方向性そのもの——トレーサビリティを強め、書類より実際の品質管理体制の運用を見るという流れ——は、越境ECの側でも近年繰り返し現れています(関連:天猫国際の越境EC食品規制 — 中国国内「受託企業」の届出が必須に)。
変更点1:輸入時の検査を「申告先の目的地」で行うと明記された
新弁法は、輸入化粧品の検査を申告先の目的地で実施すると定めています(第8条)。海関総署が別途場所を指定できる余地も残されています。輸出側については、輸出化粧品の検査を生産地で実施すると定められました(第18条)。
実務的な意味合いとしては、荷揚げ港でいったん検査待ちにするのではなく、企業の物流動線に沿った地点で検査を受けられる方向の整理と読めます。海関総署の解読でも、この変更は「輸入化粧品の検査地点を口岸(荷揚げ港)から収貨人またはその代理人が申告した目的地へ調整する」ものと説明されており、通関の円滑化を狙った措置として位置づけられています(出典:海関総署による本弁法の解読/新華網 2026年5月11日)。ただし、実際にどの程度リードタイムが縮むかは、通関地・商品カテゴリ・税関の運用によって差が出るため、現時点で「◯日短縮される」といった数値で語れる段階ではありません。取引している通関業者・物流パートナーに、12月1日以降の運用がどう変わるかを確認しておくのが確実です(関連:中国向け越境EC 物流ガイド)。
あわせて、輸入化粧品の中国語表示(中文ラベル)の検証を行うことも定められましたが、具体的な要件は海関総署が別途定めるとされており、本文では詳細が示されていません(第10条)。ラベルの実務要件は、今後の細則の公表を待って確認する必要があります。
変更点2:輸入者の情報記録は「保存期間」が明記され、記録項目が具体化された
まず押さえておきたいのは、輸入者が輸入化粧品の情報を記録する義務そのものは今回の新設ではないという点です。この義務は「化粧品監督管理条例」第45条にすでに置かれており、同条は保存期限についても条例第31条第1項の基準に従うとしています(出典:化粧品監督管理条例 第45条・第31条)。後述する弁法第12条の保存期間は、この条例の基準と同じ内容です。海関総署の解読も、今回の改正について「輸入者が記録する情報は真実・完全でトレーサビリティを確保すべきものとし、あわせて情報の保存期限を調整した」と説明しています(出典:海関総署による本弁法の解読)。つまり変わったのは義務の有無ではなく、保存期間が条文で明記された点と、記録すべき項目が具体化された点です。
弁法第12条は、記録が真実かつ完全でトレーサビリティを確保できるものであることを求め、公告第61号がその記録項目を具体的に定めています。挙げられているのは、輸入申告書番号、入境時期、品名、ブランド、特殊化粧品の登録証番号または普通化粧品の届出番号、規格、数量・重量、製造ロット番号と使用期限(または製造日と保存期間)、原産国・地域、貿易相手国・地域、製造加工企業名、国外の輸出者(代理店)名、保管場所、そして販売先の名称と連絡先、販売日と数量です(出典:海関総署公告2026年第61号)。
注目したいのは、記録が入境時点で終わらず、中国国内で誰にいつ何個売ったかという川下まで及んでいる点です。仕組みとしては、問題が起きたときに商品を追跡し回収できる状態を、輸入者側に常時持たせるものだと理解できます。保存年限は弁法本体に明記されています。第12条は、記録が真実かつ完全でトレーサビリティを確保できるものであることを求めたうえで、保存期間は「製品の使用期限が満了してから1年」を下回ってはならず、使用期限が1年未満の製品については「2年」を下回ってはならないと定めています(出典:海関総署令第284号 第12条)。起点が出荷日ではなく使用期限の満了日である点に注意が必要で、実務上の保存期間は商品ごとの使用期限の長さに応じて変わります。
日本のメーカー側の実務に引き直すと、影響が出るのは中国側の輸入者・販売代理店に渡す情報です。製造ロット番号、使用期限、製造加工企業名、規格といった項目を、出荷のたびに正確な形で提供できる体制になっているかどうかが問われます。これは商品の出所をどこまで説明できるかという話でもあり、中国市場で継続的に問われ続けている論点です(関連:「海外ブランド」「原装進口」はどこまで本当か — 越境ECで問われる"出所"の透明性)。
変更点3:登録・検査・宣伝用サンプルの通関ルールが明文化された
意外に見落とされやすいのが、サンプル類の扱いです。公告第61号は、輸入申告時に申告書の「製品許可証」欄へ特殊化粧品の登録証番号または普通化粧品の届出番号を記載することを求める一方で、登録・届出用のサンプル、企業の検査・研究開発用、宣伝用の非試用サンプルについては、この記載を要しないと整理しています(出典:海関総署公告2026年第61号)。
ただし、免除される代わりに用途ごとの裏づけ資料が必要とされています。まず第13条は、これらのサンプルに共通してサンプルの使用・処分状況の説明、非販売使用の誓約書、および税関が求めるその他の資料の提出を求め、数量が合理的な使用範囲にあるときに検査を免除すると定めています(出典:海関総署令第284号 第13条)。そのうえで用途ごとの裏づけとして、登録・届出用のサンプルであれば化粧品の登録・届出検査機関が発行した証明資料、検査・研究開発用であれば検査研究開発の計画と実施機関の能力証明、宣伝用であれば使用場所・方法・対象者・処分方法を記載した宣伝計画が必要とされています。なお委託検査契約が要るのは、検査・研究開発用で第三者の検査機関に検査を委託する場合に限られます(出典:海関総署公告2026年第61号の解読)。また、中身だけを輸入して中国国内で充填・小分けする半製品については、規格型番欄に「化粧品半製品」と記載し、貨物属性欄で「15-非预包装」(非プレパッケージ品)を選択したうえで、充填・小分けを行う企業の名称・住所・化粧品生産許可証番号を備考に記載し、あわせて国家技術規範の強制性要求に適合する旨を声明することとされています。
日本のメーカーにとっては、中国での登録・届出手続きや現地でのプロモーションのためにサンプルを送る場面が繰り返し発生します。その都度どの書類を用意すればよいかが条文レベルで示されたことは、実務上は扱いやすくなる方向の変化と言えます。
日本の化粧品メーカーはいま何を準備すべきか
ここまでの内容を、自社がどのルートで中国に商品を出しているかで整理すると、次のようになります。
| 販売ルート | 今回の改正の影響 | いま確認しておくこと |
|---|---|---|
| 越境EC(天猫国際などの保税区・直送) | 第33条により本弁法の一般ルールではなく関連規定に従う。手続きが直ちに変わるものではない | 従来どおり越境EC向けの規定に沿って運用。将来の一般貿易移行を見据え、ロット・使用期限・製造企業情報の提供体制を整えておく |
| 一般貿易(中国の輸入者・代理店経由) | 12月1日から新弁法・新公告が適用される | 検査地点の運用変更、情報記録に必要な項目の提供、中文ラベル細則の続報を通関業者と確認 |
| これから一般貿易を検討する段階 | 移行後に適用されるルールが今回置き換わった | NMPAの登録・届出(注册・備案)の要否とあわせ、新ルール前提でスケジュールと費用を見積もる |
越境ECで販売している段階のブランドが、今回の改正を理由に何かを急いで変える必要は基本的にありません。むしろ重要なのは、越境ECと一般貿易では適用される規制がそもそも別系統だという構造を、社内で共有しておくことです。この違いを曖昧にしたまま「中国の規制が変わったらしい」と伝わると、必要のない対応に工数を割いたり、逆に本当に効いてくる場面を見落としたりします(関連:中国EC 法規制・コンプライアンス)。
一般貿易をすでに走らせている、あるいは近く移行を検討しているのであれば、確認すべきは実務の三点です。中国側の輸入者が情報記録を作れるだけの情報を自社から渡せているか。検査地点の変更で通関のリードタイムや費用の前提が変わらないか。そして、中文ラベルの細則が公表されたときに気づける体制になっているか。いずれも、中国側のパートナーと分担を決めておけば事前に潰せる論点です。
よくある質問
2026年12月1日から、天猫国際での販売手続きは変わりますか?
新弁法の第33条は、越境EC小売輸入の化粧品について本弁法の一般ルールではなく関連規定に従うと定めており、一般ルールの適用対象からは切り分けられています。したがって、越境ECルートでの販売手続きが12月1日を境に一律で変わるという内容ではありません。ただし出品先のプラットフォーム側の規則は別途変わりうるため、天猫国際の商家規則の更新は継続して確認してください。
今回の改正で、NMPAの登録(注册)や届出(備案)は不要になりますか?
いいえ。新弁法の第6条は、輸入化粧品が特殊化粧品の登録または普通化粧品の届出を済ませていることを前提とし、税関が電子データで自動照合すると定めています。一般貿易での輸入において登録・届出が必要である点は変わりません。一方、越境EC小売輸入は「個人が自分で使うために輸入する物品」として扱われ、登録・届出が免除される建て付けが続いています(出典:商財発〔2018〕486号)。
「輸入化粧品情報記録」は日本のメーカーが作るのですか?
記録・保存の義務を負う主体は、中国側の化粧品輸入者です(弁法第12条。義務そのものは化粧品監督管理条例 第45条に由来し、第12条が保存期間を明記、公告第61号が記録項目を具体化しています)。日本のメーカーが直接この記録を保存するわけではありませんが、記録項目には製造ロット番号、使用期限、製造加工企業名、規格などが含まれるため、これらを出荷のたびに正確に提供できる体制が実質的に求められます。なお保存年限は弁法第12条が定めており、製品の使用期限が満了してから1年(使用期限が1年未満の製品は2年)を下回ってはならないとされています。
登録用のサンプルを中国に送るとき、何を用意すればよいですか?
用途を問わず共通して必要なのが、サンプルの使用・処分状況の説明と、非販売使用の誓約書、そして税関が求めるその他の資料です。検査が免除されるのは数量が合理的な使用範囲にある場合に限られます(弁法第13条)。そのうえで用途別の裏づけとして、登録・届出用サンプルには化粧品の登録・届出検査機関が発行した証明資料、検査・研究開発用には計画書と実施機関の能力証明、宣伝用には使用場所・方法・対象者・処分方法を記載した宣伝計画が求められます。委託検査契約が必要になるのは、検査・研究開発用で第三者の検査機関に検査を委託する場合だけです。用途によって必要書類が変わるため、送付前に用途を確定させておくことが重要です。
中文ラベルの要件はどう変わりますか?
新弁法の第10条は輸入化粧品のラベル検証を行うと定めていますが、具体的な要件は海関総署が別途規定するとされており、弁法本文では詳細が示されていません。現時点では確定した新要件を前提に準備を進められる段階ではなく、細則の公表を待って確認するのが妥当です。
まとめ — 越境ECの足元は変わらない。変わるのは「次の一手」の前提
2026年12月1日に施行される海関総署令第284号と公告第61号は、中国に化粧品を輸入する際の検査検疫の枠組みを置き換えるものです。検査を目的地で行うこと、従来からある輸入者の情報記録義務について保存期間を明記し記録項目を販売先まで含めて具体化したこと、サンプル類の通関書類を用途別に明文化したことが主な変更点にあたります。一方で、越境EC小売輸入の化粧品は第33条により本弁法の一般ルールではなく関連規定に従う扱いで、天猫国際などで販売している日本ブランドの手続きが直ちに変わるわけではありません。
とはいえ、越境ECはあくまで中国市場への入口であり、需要が確かめられた先には一般貿易という選択肢が続きます。そのときに適用されるルールが今回置き換わった、というのが日本の化粧品メーカーにとっての本質的な意味です。当社は、越境ECの運営代行だけでなく、越境ECで何をどこまで検証し、どの段階で次のルートを検討すべきかという順番の設計からご相談を受けています。中国市場での進め方を整理したい方は、お気軽にお問い合わせください。